2014年5月17日土曜日

久々に読んだ本の紹介。「原発事故と放射線のリスク学」

久々に読んだ久々に読んだ本の紹介。本の紹介。
中西準子「原発事故と放射線のリスク学」日本評論社 2014.3.11.

この中西準子という人は「言うことは言う!」系の研究者であり、日本において「リスク学(リスクコミュニケーション)」を起こした人でもあります。食品系の安全性の話題と関連して知ったのですが、このリスクコミュニケーションという考え方は実生活にも役立ちます。この本もリスク学なので、放射線がどの程度危険か、という話ではなくてこれくらいの危険があるので政策としてはこれくらいすれば良いのではないか?という感じです。

さてこの本には原発事故を由来とする放射線の危険は実際にどれ位で、どの程度の基準値を作るのが良いかといったことが主題として書かれており、実際の避難の基準、除染の基準だけでなく、コスト面にも言及しております。今行われている除染の基準は「年間の追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト(環境省)」より少なくなるようにという内容で、福島より遠く離れた場所に住んでいる自分にとっては実感のある数字ではありません。

しかし、税金を使っていたり、なにより東京電力の電気を使って生活している身としても、日本という枠組みの中でこの福島原発事故問題を扱っていかなくてはならないのだなと実感しました。今までは、当事者である福島県が決めればいいじゃん・・・的な考え方でしたが、世論レベルで福島の今後をどうするのかを考え始めなければならないなと思いました。

本を読んで学んだことは

・自然由来以外の放射線のリスクはしきい値無しで評価されている(化学物質より厳しい)
・放射線リスク管理の基準の元データは、広島、長崎の原爆のデータ、第五福竜丸、チェルノブイリなどであり、調査対象、期間も十分あり信頼できる。
・放射線はがんになるリスクを高めるが、がんのリスクは食事、運動、加齢、遺伝的要素などの要因のほうがはるかに大きい(だからといって放射線のリスクは無視しない)
・リスク=ハザード(危険性)×確率。放射線の場合、放射線の強さとそれを浴びる時間となる
・現在の福島原発事故に関する放射線測定値などは計算式上でかなり水増しされており、
現在の測定値と基準を守っていれば、食品、居住に関してのリスクはかなり小さい
・チェルノブイリで問題となった甲状腺がんは食品による内部被爆が要因だったが、今回の事故では内部被曝の影響は少ない。よって甲状腺がんの発生率に異常は起こりにくい。
・除染など居住者に対する支援だけでなく、移住を選択した人にももっと積極的に支援すべき

といったところでした。根拠も無く原発事故の影響って大丈夫かな・・・と思っていたところなので情報が少しすっきりしました。(もちろん、そんなのウソウソ、原発の影響はやばいよっていう人も居るだろうけど)


参考図書として菊地誠著の以下も読みました。初心者向けの本です。
いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話 (単行本)